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コラム

【連載 vol.40】ファストファッションのセカンドハンド=サステナブルなのか

「クローゼットからはじまるサステナブル」では、「サステナビリティ×ファッション」をテーマに、決して難しくない、肩のチカラを抜いてサステナブルファッションを取り入れるヒントをエシカルコーディネーターのエバンズ亜莉沙さんが紹介。今回はファッション業界でのセカンドハンド市場と、ファストファッションの課題を考えていきます。

ファストファッションの古着市場への参入と課題

ファストファッションのセカンドハンドはサステナブルなのか

前回に引き続き、今回も「ファストファッション」とその持続可能性について追求していきます。

前回、ファッション業界の課題点と消費者の意識の変化、そしてファストファッションの古着市場への参入について触れました。

『ファストファッションの古着市場への参入』
この動きは一見、サステナブルな業界へとファッション業界を大きく変える様に見えますが、実際はどのようなものでしょうか。

そもそも古着の需要が高まっている背景には、廃棄されてしまう衣類の量を減らし、環境負荷を軽減するという目的があります。ファストファッションでの古着市場の参入で注目したい点は、企業全体の生産量を減らしてはいないという点。

また、それだけでなく他にも大きな課題となっている人権面などの情報は、あまり開示されていなかったりと不透明な部分が多いのも事実。シンプルには喜べないのが、現状となっています。

前回の記事を読んでいない方は、良かったら併せて読んでみてくださいね。

急成長するセカンドハンド市場

2022年 Thredup Resale Report によると、世界のセカンドハンド市場は、ファッション市場全体の3倍ものスピードで成長すると言われています。
ブランドが自社で始めるリセールプログラムもトレンドとなり、2020年から2021年の間に275%も増えているとのことです。

ブランドが自社で始めているリセールプログラムが、2020年から2021年で275%増が分かるグラフ

そんな中、大手ファストファッションブランドも、セカンドハンドビジネスを早急に取り入れようと動いています。環境に優しい商品を選びたいと考える人が増えている中で、そのような人たちの購買を促すことも狙いの一つでしょう。

もちろん、まだ着ることのできる服を廃棄するのではなく、新たな価値をつけることはサステナブルファッションを語る上では欠かせないことです。


セカンドハンドで得られる利益を使い、よりサステナブルな企業へと変化すれば良いですが、もしこれまでと変わらない大量生産、 大量廃棄を続けているようであれば、グリーンウォッシュそのもの。*1
このような企業からセカンドハンドを購入することは、むしろマイナスとも捉えられるのではないでしょうか。

*1 グリーンウォッシュ:企業などが実態とは異なっているにもかかわらず、自社製品が環境に配慮したものだとアピールすることを指す言葉

ファストファッションのセカンドハンドは、本当にサステナブルなのか

ファストファッション企業のセカンドハンドはサステナブルとイコールではない

この様に、セカンドハンド=サステナブル とは限らなくなってきていてしまっているのはとても残念ですね。

新たに生産するのではなく、現状あるものを次の人につなげる取り組みをしている企業(例えばKOMEHYOさん)であれば、サステナブルといえます。

厳しい言い方かもしれませんが、大量生産を続けるためにセカンドハンドを利用している企業は、衣類廃棄の課題には焦点を当てていますが、そもそもの大量生産、大量廃棄に関してのアクションが不十分ではないでしょうか。

さらに永く使うことを推奨しながらも、長持ちする素材や作りではない物づくりを続けているのであれば、尚更本質的な変化までは遠く感じてしまいます。

一方で、中にはセカンドハンド商品の販売を始めているファストファッションブランドは、彼らが抱える大量廃棄課題を解決するためのアクションを始めています。しかし、全体を見るとまだまだ足りていないのが現状です。

例に『H&M RE:WEAR』 は、セカンドハンドの販売をオンラインでしておりますが、年間生産量と比較するとまだまだ少ないようです。加えて、このプログラムを利用することで、商品クーポンがもらえたりと、さらに新たな購買を促す仕組みにもなっています。

この様に、並行して大量生産を続けていては、根本的な環境負荷の軽減はもちろん、労働者の人権問題に関してもポジティブな変化が起きているとは考えにくいですね。

2021年 Remake Fashion Accountability Report によると、どの大手ファストファッションブランドも、リセールモデルは環境に配慮した原料を使った生産モデルに切り替わっていないと言っています。

現状を考えると、ファストファッションはまだまだサステナブルとは遠いのかもしれません。

サステナブルなファッションのあり方は、今の作りすぎの状況を変えていかないことには実現ができません。

大量生産を減らすことがサステナブル

何が本当にサステナブルで、何がそうでないのかを見分けるのが、なかなか難しいという意見も多く聞くので、次回はどのようにグリーンウォッシュを見分けるのかについてお話ししたいと思います。

ファッションが好きだからこそ持続可能に、心地よく、そして今後も楽しんで行ける方法を模索しながら、本気で取り組んでいる企業を応援したいですね!

writer profile
エバンズ亜莉沙
サムネイル: エバンズ亜莉沙
エバンズ亜莉沙(えばんず・ありさ):学生時代 米国オレゴン州で環境科学の授業に出会ったことをきっかけに、自分と世界の繋がりに気づく。2015年日本に帰国後、国際NGOでインターンをしながら、エシカル協会主催 フェアトレードコンシェルジュ認証 21歳で取得。同年世界一周を経験し、様々な人や文化に触れたことでさらに世界の抱える問題や解決策に興味関心を抱く。現在はフリーランスで『サステナブル』や『世界に自分に優しいライフスタイル』をキーワードに、SNSを中心とした発信、イベントへの登壇や、様々なプロジェクトのディレクター / コーディネーターを務める。