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【海の環境問題】原因と現状は?海洋汚染や漁業問題についても解説

近年問題になっている海洋プラスチックゴミなどの増加による海洋汚染や、乱獲による資源の枯渇。これら海の環境問題は深刻化の一途をたどっており、私達の生活も脅かされています。本記事では、海の環境問題の現状や主な原因、世界の取り組みや個々で実践できる環境活動を紹介します。

深刻化する海の環境問題の現状

汚染される海

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海洋プラスチックや廃棄物・生活排水などを原因とする海洋汚染、資源の乱獲による生態系の破壊などの問題は年々深刻化しています。2015年にサミットで採択されたSDGs(持続的な開発目標)では、2030年までに海洋汚染を改善することが目標とされました。しかし、海洋汚染は改善されていないのが現状です。

海洋ゴミは未だに海を汚し、魚や鳥、海洋哺乳類やウミガメなどの生物を傷つけ、死に至らせています。2050年には海のゴミが海洋生物を上回るという予測も。海が汚れると海の生物が絶滅するだけでなく、私達の生活にも多大なる悪影響を与えるようになってしまいます。

海の環境問題の原因

海岸に打ち捨てられたペットボトル

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海洋汚染問題の最たる原因として取り上げられているのは、海洋プラスチックです。その他にも生活排水や有害液体も海洋汚染の原因となります。ここからは、海の環境問題の主な原因をチェックしていきましょう。

海の環境問題の原因①海洋ゴミ

海に漂うゴミ=「海洋ゴミ」と呼びます。その中でも特に問題になっているのは、毎日の生活の中で当たり前に使用しているビニール袋や発泡スチロールで、自然に分解されることのないゴミであるプラスチックです。

不適切な方法で捨てられてしまったプラスチックのゴミは、川を伝ってやがて海に流れつきます。さらにプラスチックは、分解されず小さな粒子に。これが魚などの海洋生物を通じて人間の身体にも取り込まれます。プラスチックで海が汚染されることを「海洋プラスチック汚染」といい、世界の海には1億5千トンものプラゴミが存在するといわれています。

海の環境問題の原因②廃棄物

海岸に不法投棄されたゴミが海に流れ込んでしまうのも、海洋汚染の原因の1つです。ほとんどは漁業関係者による不法投棄が原因でしたが、この数年で減少してきました。一方で、一般市民や事業者による不法投棄は増加傾向にあります。

海の環境問題の原因③油や有害液体の流出

燃料や原料として使用している油や化学物質などの液体流出も、海洋汚染の原因になります。油が魚のエラや体に付着すると、機能不全を引き起こし、稚魚や卵は抵抗力が無いため即死滅します。その他の海の生物や鳥についても同様です。

油が流れ出す原因の多くは、船舶事故。タンカーの座礁事故などで船舶から油が流出すると、石油成分を体内に取り込んでしまい行動障害や知覚麻痺を引き起こします。生態系への影響は大きく、非常に深刻です。

日本で有名な公害問題「水俣病」は、海に流れ込んだメチル水銀を魚が取り込み、その魚を人が食べたことで拡大しました。悲劇を繰り返さないためにも、油や有害物質の流出を防ぐ必要があるのです。

海の環境問題の原因④生活排水

台所やトイレなど、私達の日常生活から発生する生活排水も海洋汚染の原因。生活排水には有機物が含まれています。有機物は赤潮の発生源となり、海の酸素が失われてしまうのです。人間と同様に、海洋生物も酸素が必要なため、赤潮で酸素が減ると死んでしまう恐れがあります。そのため、生活排水は生態系を崩す原因といえるでしょう。

海の環境問題にも関係している「漁業問題」

海に佇む漁業船

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海洋汚染以外にも海の環境問題に関係しているのが「漁業問題」です。過剰な漁獲や違法な漁獲、環境に配慮のない破壊的な漁獲などが問題になっています。ある種の魚が絶滅の危機に瀕するだけでなく、私達の地域や社会まで深刻な影響を与えるものです。詳しく見ていきましょう。

乱獲による資源の枯渇

乱獲による資源の枯渇は、生物に危害を加えることにより生態系バランスが悪化し、昨今の重大な問題になっています。希少種の混獲で本来対象ではない魚や怪獣魚が一緒に漁獲されてしまい、不要なものは廃棄されてしまっているのです。

さらにゴーストフィッシングも問題とされています。ゴーストフィッシィングとは、放置された漁具が生き物に危害を与えることをいいます。このような問題を解決するためには、再生する量や速さを考えながら利用することが大切です。

漁業者の減少

漁業者が減少していることも深刻な問題です。漁業者は利用者であるとともに環境保全の担い手でもあります。問題を解決するため漁業者は、海岸の清掃を始めとする海の環境保全への取り組みを行っています。

現在、約60年で漁業従事者は1/5までに減少。これは少子化高齢化問題や過疎化、さらには労働環境の過酷さが原因と言われています。さらに資源の枯渇により収入が減少する要因も重なり、これからはより一層持続可能な漁業についての取り組みが必要となるでしょう。

海の環境問題に対する世界の取り組み

地球の海を守る世界各国

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現在、海洋プラスチックを削減する取り組みが世界中で行われています。ここからは、日本やアメリカ、ヨーロッパやアジア諸国の取り組みについて見ていきましょう。

日本

日本では、環境省によって海洋プラスチックゴミ対策アクションプランが策定され、ゴミの回収や処理の徹底、海洋流出の防止を各所に広めています。それと同時に、海に影響の少ない素材開発や、途上国のゴミ流出の防止を支援する活動も推奨しています。

さらにプラスチック・スマートという取り組みも。これはキャンペーンサイトを通じてプラスチックリサイクルの取り組みをシェアするもので、個人や企業、自治体まで参加できるのが特徴です。プラスチックと賢く付き合うことを目的として開始されました。その他、植物由来のプラスチック製品の開発やリサイクルの強化などが企業や団体で増加傾向にあります。

また、サステナブル・シーフードという取り組みも始まりました。サステナブル・シーフードは環境や社会に優しい方法で漁獲・養殖された水産物のことをいい、持続可能な漁業を目指した取り組みです。

EU

環境問題対策に積極的な国が多いEUでは、2021年までにすべてのプラスチック製品の流通を禁止にする法案が可決しています。この法案は、2030年までにプラスチック容器や包装のすべてをリユース、リサイクル可能なものにすることや、使い捨てプラスチックのマッピングやモニタリングを駆使して海洋流出を防止するといった内容です。

循環経済を推進して、プラスチックだけに留まらない、あらゆるものを可能な限り再利用することを大きな目標にしています。使い捨てプラスチックに関する規制案が積極的に提案されるなど、EUは海の環境問題を深刻に受け止めているのです。

アメリカ

アメリカでは、マイクロビーズ除去海域法という法律が定められています。マイクロビーズとは、歯磨き粉などに含まれているスクラブのように細かなプラスチックのことをいいます。

アメリカではこの法律が成立してから、スクラブを始めとするマイクロビーズ入り製品の製造や販売を禁止。また環境に悪影響がないと言われている生分解性のものに関しても、全面禁止を掲げています。さらにレジ袋の提供を禁止、プラスチック原料のストローやマドラーの使用を禁止など、州独自対策も措置しました。今後は、プラスチックゴミを新たにクリーン燃料にする新技術の開発も期待されています。

アジア諸国

アジア諸国では、これまで廃プラスチックを他国から輸入してプラスチックを新たに作っていました。しかし、ここ数年で海洋汚染対策としてゴミの輸入規制が行われています。

<中国>
固体廃棄物の輸入を禁止したりゴミの回収や廃棄体制を見直したりと、環境問題を改善するための活動が積極的になりはじめています。

<タイ>
中国のように廃プラスチックの輸入を一律禁止に。電子廃棄物に関しても輸入規制を強化しています。

<インドネシア>
プラスチック袋を使用禁止に。海藻からできた包装紙を使用するなどの試みが始まっています。

海の環境問題に対して私達ができること

海岸でゴミを拾う人

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ここでは、海の環境問題に対して私達ができることを紹介します。小さなことでも、集まることで大きな成果につながります。

ゴミの発生を減らす

リデュース・リユース・リサイクルの3Rを実践すれば、ゴミの量を減らせるでしょう。物の再利用やゴミの分別の徹底も、今すぐできる効果的な活動です。持続可能な社会を目指すサステナブルな活動も、最近は注目されています。

プラスチック製品を使わない

レジ袋やフォーク、スプーンなど、私達の日常にはプラスチック製品が溢れています。マイバッグを使用したり、無料で提供されるプラスチック製品を断ったりすることは、プラスチックゴミの削減につながるでしょう。

ボランティアに参加する

海に流れ出てしまうゴミを少しでも減らせる河川や海岸の清掃ボランティアに参加することは、比較的簡単な一歩です。自治体やボランティア団体など、身近で活動している人達の話を聞いてみるとわかりやすいでしょう。

海の環境問題の解決には一人一人の意識が大切

美しい水中

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海洋汚染の進行を止め、漁業問題を解決していくためには、一人一人が意識して大きな流れにしていく必要があります。個々の活動が集まって、世界レベルの大きなものになれば海に漂流するゴミを確実に減らせたり、絶滅の危機に瀕している海洋生物を救えたりすることができるのです。広大な海や生態は世界全体で守っていくことが非常に重要なポイントといえるでしょう。

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aki
サムネイル: aki
ヴィンテージアイテムが大好きな27歳。海外の古着屋さん巡りで自分だけのアイテムを見つけるのが趣味。好きなブランドはMARNI。憧れブランドはCHANEL。