地球に優しい再生繊維とは?その特徴と使用しているハイブランドも紹介
再生繊維とは、木材や廃プラスチックなどをいったん溶かし、再生して作られた化学繊維のこと。ファッションアイテムはナイロンなど石油を原料とした繊維を多く使用していますが、昨今のサステナブルへの取組によって再生繊維についても注目度が上がってきました。今回は、再生繊維の種類や特徴と使用しているハイブランドを紹介します。
目次
再生繊維とはなにか
再生繊維とは布を作る繊維の一種です。再生繊維は木材などから作る「植物系」と、ペットボトルなどが原料の「化学系」の2種類に分かれます。今後より注目が集まっていくといわれる再生繊維について紹介します。
再生繊維とは化学繊維のひとつ
再生繊維とは化学繊維のひとつです。原料の木材などを化学反応で溶かして、再紡糸(再生)することから再生繊維と呼ばれています。
そもそも繊維には天然繊維と化学繊維の2種類があり、天然繊維には綿などからできている植物繊維と、ウールなどからできている動物繊維があります。一方の化学繊維は木材などが原料のものと、石油など人工物が原料のものがあります。
植物系と化学系の2つに分けられる
再生繊維は、植物系と化学系の2つの分類に分かれます。植物系は木材や綿など天然素材を溶かして再生して作ったもので、化学系はペットボトルなどのリサイクル素材を溶かして再生して作ったものです。
再生繊維の特徴と代表的な4つの再生繊維
再生繊維は天然繊維に似せて作られており、天然繊維と同じような特徴を持っていますが、少々異なる点も。ここでは、再生繊維の特徴と代表的な4つの繊維を紹介します。
再生繊維の特徴
再生繊維には植物系と化学系がありますが、代表的な再生繊維はレーヨン、キュプラ、ポリノジック、リヨセルの4つで、これらはすべて植物系です。
植物系の再生繊維は化学系の再生繊維に比べて光沢や肌触り、発色性が良く吸湿性が優れているのが特徴です。また、人工的な加工をしているため天然繊維以上の強度や耐久性を持っています。しかし、水に濡れると強度が落ち、シワになりやすいという点もあります。
レーヨン
レーヨンは1892年にイギリスで発明された、世界初の化学繊維です。原料は木材パルプで、もともと絹の代わりになる繊維として開発されたため絹のような光沢があります。
肌触りがよく、吸湿性に優れているという特徴がある一方で、水を吸うと縮んでしまい、耐摩耗性も弱いので洗濯の際には注意が必要です。
キュプラ
キュプラは、スーツの裏地などに使われている再生繊維で、高級繊維のひとつです。原料はコットンの種の産毛の部分の「コットンリンター」です。吸放湿性に優れていてムレにくく、静電気が起きにくいという特徴があります。ただ、水に濡れると強度が弱くなり、耐摩耗性もないのでお手入れには注意が必要です。
ポリノジック
ポリノジックはレーヨンの改良版のような素材です。原料は木材パルプでレーヨンと似たような特徴を持っていますが、レーヨンより強度が高くシワになりにくいといわれています。ただ、吸水性ではレーヨンが勝るようです。
リヨセル
リヨセルはユーカリの木が原料で、海外の商標名である「テンセル」と呼ばれることもあります。特徴はレーヨン、キュプラ、ポリノジックとほぼ変わりませんが、強度が高いので洗濯の際に注意する必要がなく、お手入れが楽です。ただ、摩擦によって毛羽立ちやすく、白くなりやすい傾向があります。
再生繊維がサステナブルと言われる理由
再生繊維は木材などの資源を使って作られています。限りある資源を使っているにもかかわらず、なぜサステナブルといえるのでしょうか。その理由を解説します。
環境資源を節約できる
再生繊維がサステナブルといわれる理由は、資源の節約につながるためです。
サステナブルとは本来「維持できる」という意味ですが、「地球環境の持続可能性」という意味で使われることが増えています。具体的には、地球に住み続けるために人や環境にやさしい発展を目指すことを指します。
植物系の再生繊維は化学繊維と違って石油資源を使わないため、サステナブルです。また、植物系の再生繊維であるキュプラの原料のコットンリンターはワタの綿花を採取した後に残る部分なので、資源を有効活用しているといえます。一方、化学系の再生繊維も、石油が原料のペットボトルを再生して作る場合は石油資源の節約になります。
土に埋めると土に還る
再生繊維のなかでも、植物由来の繊維は土に埋めると還るため、サステナブルだといわれています。
土に埋めると還るということは、微生物の働きで水と二酸化炭素に分解されること(生分解性)を意味します。植物系の再生繊維は生分解性で、特にコットンリンターが原料のキュプラは生分解の速度が高いのだそうです。
マイクロプラスチックを出さない
植物系の再生繊維は海洋汚染の原因のひとつである「マイクロプラスチック」を発生しないため、サステナブルだといわれています。一方、石油原料の再生繊維を使った服は洗濯時にプラスチックがはがれてマイクロプラスチックを発生させるため、やがてそれが海に流れ込んでしまうことが問題視されています。
マイクロプラスチックが海に流れ込むと、魚などの海洋生物がプランクトンと誤って食べてしまうことも。すると魚の健康に悪影響が出る恐れがあり、その魚を食べた人間への健康被害も懸念されています。
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再生繊維が抱える課題
再生繊維は資源の節約など環境保全に役立つ繊維だとされている反面、生産工程での懸念が課題となっています。具体的にどのようなことが懸念されるのか解説します。
原料の森林資源を守る取り組み
再生繊維の課題は、生産する上で木材の大量伐採を招く可能性があることです。
再生繊維の原料の木を大量伐採をした場合、環境破壊を引き起こすケースがあります。そのため、森林を壊さずに木材の使用量を管理する必要があるのです。
そんな中、適切な森林管理を広める活動をしているのがFSC(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)です。FSCは森林や森林経営を行う組織を対象に、環境・社会・経済のバランスがとれた管理・運用ができているかを評価・認証しています。認証された森林から採れた木材には「FSC認証」が付けられます。FSC認証の木材を使った製品を販売・使用している企業や団体は地球環境保全の意識が高いといえるでしょう。
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製造過程で使用する化学薬品の影響
再生繊維は生産時に危険な薬品を使うため、生産者の健康被害のリスクが指摘されています。
再生繊維を作る際には、木材などに化学反応を起こさせるために人体に危険な薬品が使われます。もし薬品を誤って使用すると健康被害が出る恐れも。また、薬品の廃棄方法が不適切な場合、廃液が排水口から海に流れ込んで海洋汚染が広がる危険性もあります。
再生繊維を使用しているブランド
再生繊維は天然繊維に似せて作られているため肌ざわりや使い心地が良く、品質の良さからハイブランドでも取り入れられています。ここでは、再生繊維を積極的に使用しているハイブランドを紹介します。
グッチ(GUCCI)
グッチは、ハイブランドで初めて再生素材を使用し、FSC認証の木材を使用した再生繊維のレーヨンをウェアやアクセサリーに使用しています。その他、漁獲用の網や廃材、古いカーペットなどを再生して作られた繊維を使った商品もあります。
ステラマッカートニー(Stella McCartney)
ステラマッカートニーは、FSC認証を受けたスウェーデンの木材を使った再生繊維を使用しています。また、ナイロン製品も再生素材に切り替え、さらに2025年までにポリエステル製品もすべて再生素材にすることを目指しており、サステナブルの意識が高いブランドといえるでしょう。
プラダ(PRADA)
プラダは、2021年までにすべてのナイロン製品をECONYL®という再生ナイロンに切り替えると発表しています。ECONYL®とは品質を維持しながら何度でも再生できるナイロン糸で、海洋プラスチックや埋立地の廃棄プラスチックが原料です。一般的なナイロンの原料は石油であるため、プラダの取組はサステナブルだといえます。
サステナブルな再生繊維やブランドの取組に注目しよう
再生繊維は化学繊維のひとつで木材などが原料ですが、天然繊維に似た特徴を持ち、使い心地の良さに定評があります。再生繊維を使用したアイテムを選ぶことは石油の節約や自然環境への配慮にもつながるため、サステナブルといえるでしょう。近年はハイブランドでも再生繊維を取り入れています。服などを購入するときは素材もチェックして、サステナブルな消費活動を意識してみてください。
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