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パリ協定から始まったネットゼロ。ファッション業界の取り組みとは?

ネットゼロ(Net Zero)は温室効果ガスの排出量を正味ゼロにする温暖化対策の一つです。経済や社会を維持していくために排出せざるを得ない温室効果ガスは、地球環境に悪影響を与えています。本記事では、ネットゼロについて解説するとともにファッション業界が抱えている問題や取り組みについて紹介します。

ネットゼロとは

ネットゼロやエコロジーに関連した絵が書かれているブロック

出典 shutterstock

ネットゼロとは、温室効果ガスの排出が正味ゼロという意味を持ちます。ここでは、ネットゼロについて解説するとともに、課題や似た意味を持つカーボンニュートラルについて紹介します。

温室効果ガスの排出量を正味ゼロにすること

ネットゼロ(Net Zero)とは、温室効果ガスの排出量を森林などの吸収量を差し引いて正味ゼロにするという意味です。この温室効果ガスには、地球環境に影響を与えるCO2やメタンなど、すべての排出ガスが含まれています。このネットゼロは新しい温暖化対策として、2015年のパリ協定で採択されました。

ネットゼロの課題

パリ協定で決められた温暖化対策で、世界共通の目標が定められました。具体的には、産業革命以前に比べて世界の平均気温上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃以内に抑える努力をすることが挙げられます。これは、世界の温室効果ガス排出量をできるかぎり早くピークアウトし、21世紀後半までに温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとることを示しています。

各国の政府が2050年までに炭素排出量をネットゼロにするという目標達成に向けて、気候変動の課題に立ち向かっています。

ネットゼロと同じ意味として使われているカーボンニュートラル

ネットゼロと同じ意味として使われている、カーボンニュートラルという言葉があります。カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量から森林などによる吸収量の他に、CO2回収技術などによる除去量を差し引いてゼロにすることを意味しています。

カーボンニュートラルは、CO2排出量と吸収量がいずれにも偏らない、すなわちCO2の排出量と吸収量が中立している状態です。一方、ネットゼロは実質のCO2排出量がゼロと質量を表しています。最終的には同じことを指しているため、明確な区別や使い分けはありません。

ネットゼロの取り組み

2050の数字とネットゼロが書かれたブロックを並べる男性の手

出典 shutterstock

パリ協定で掲げられた目標を達成するために、世界各国がネットゼロを目指してさまざまなことに取り組んでいます。ここでは、日本と海外の取り組みについて解説します。

日本の取り組み

日本では2020年10月に、「2050年までのカーボンニュートラル実現」を宣言しています。そのため、2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出をネットゼロにすることを目標としています。

これらの政策をまとめたものが、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。成長が期待される14の重要分野について予算や税、規制改革・標準化、国際連携などの支援策が示されており、目標や企業の前向きな挑戦を後押ししています。

【成長が期待される14の重要分野】
■エネルギー関連産業
・洋上風力・太陽光・地熱
・水素・燃料アンモニア
・次世代熱エネルギー
・原子力
■輸送・製造関連産業
・自動車・蓄電池
・半導体・情報通信
・船舶
・物流・人流・土木インフラ
・食料・農林水産業
・航空機
・カーボンリサイクル・マテリアル
■家庭・オフィス関連産業
・住宅・建築物・次世代電力マネジメント
・資源循環関連
・ライフスタイル関連

海外の取り組み

現在、120国以上の国がネットゼロの実現を宣言しています。IEA(国際エネルギー機関)によると、現状のままだと2050年にネットゼロは実現せず、気温が上昇すると分析されました。そこで、LEDなどの既存技術の他、エネルギー利用の高効率化や石炭火力発電の代替がネットゼロへの役割を果たすなどのロードマップを公表することで、多くの国や産業界等に影響を与えています。

【各国の取り組み】
・イギリス:ネットゼロ目標を法律で規定
・ドイツ:先端技術支援による景気刺激策を実施
・フランス:インフラやクリーンエネルギーなどのエコロジー対策に、2年間で3.6兆円を総事業費として算出
・韓国:再エネ拡大、EV普及、スマート都市等のグリーン分野に3.8兆円を政府が支出

ファッション業界が抱えるネットゼロの問題と取り組み

カーボンニュートラルを考慮した服

出典 shutterstock

ファッション業界でも、自然環境への悪影響が懸念されており、国連が発足した憲章に賛同したさまざまなブランドが、自然への環境負荷軽減に取り組んでいます。ここでは、ファッション業界が抱えるネットゼロの問題や行っている取り組みについて解説します。

ファッション業界が抱えるネットゼロの問題

ファッション業界では、CO2排出や水質汚染など自然環境への悪影響が指摘されています。

商品を大量に生産・消費・廃棄することから脱却しなければ、2030年までに年間約27億トンにものぼる温室効果ガスが排出されると懸念されています。これは、ファッション業界に課せられた温室効果ガス排出量の目安の2倍となっており、パリ協会で定められた目標からほど遠いのが実状です。

ファッション業界の取り組み

パリ協定の目標を実現するために、2018年に国連が発足したファッション業界気候行動憲章に賛同している約130のブランドがあります。主なブランドは、シャネル(CHANEL)やグッチ(GUCCI)、バーバリー(BURBERRY)、ルイ ヴィトン(LOUIS VUITTON)、ディオール(DIOR)、Adidas(アディダス)、Puma SE(プーマ)などです。

このファッション業界気候行動憲章には、2030年までに環境負荷を軽減するために、温室効果ガスの排出量半減や100パーセントローインパクトな素材に切り替えるなどの事項があります。ローインパクトとは、自然に対する影響を少しでも低くしようと心がけることを指し、コットンやポリエステル、レザーなどではなく、持続可能な素材や生産工程の環境負荷の低減などに着目することを指しています。

カーボンニュートラルに取り組むファッションブランド

両手に服を持っている女性

出典 shutterstock

ファッション業界でもネットゼロと同じ意味を持つカーボンニュートラルへの意識が高まっています。ここでは、カーボンニュートラルに取り組んでいるファッションブランドの実績を紹介します。

グッチ(GUCCI)

グッチは自社、全サプライチェーンの事業活動において、温室効果ガスの排出を回避・削減する取り組みを行っています。さらに、2018年より年次ベースで残存する温実硬化ガスの排出量を完全にオフセットするカーボンニュートラルを実現。

カーボンニュートラルを達成してきたグッチの環境戦略をさらに発展させるべく、森林やマングローブ林の再生・保護など自然環境のポジティブな変化を生み出そうとしています。

バーバリー(BURBERRY)

バーバリーは気候にポジティブな変化を起こすために、温室効果ガスの排出量をゼロにするカーボンニュートラルな取り組みを実施しています。例えば、電気自動車を利用したり、サステナビリティ認証を受けた会場を使用したりなど、コレクションの発表をカーボンニュートラルで行っています。

他にも地域や植物、生物などにサステナブルでプラスとなる環境を生み出し、持続することを約束。さらにCO2の排出量よりも削減量の方が多く、カーボンニュートラルよりもさらにハードルを上げたクライメートポジティブを2040年までに達成することを宣言しています。

ネットゼロへの取り組みを行うファッション業界を意識してみよう

ネットゼロの文字が描かれた透明の球を持つ人の手

出典 shutterstock

多くの国や企業がネットゼロを目標として掲げています。それは、地球の環境問題がそれほどまでに深刻なことを示しています。地球の環境問題を悪化させないためにも、ネットゼロの知識を身につけることは大切です。消費者としてブランドを選ぶ際にも、ネットゼロへの取り組みを行っているファッション業界を意識してみましょう。

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Ladybug
サムネイル: Ladybug
会社員として働く20代。35歳の誕生日にはTASAKIのジュエリーを自分にプレゼントしようと目論み中!